・のどくろが食べられる四ツ谷の居酒屋「うまい魚 のどくろ」

2014年9月13日、全米オープンでアジア人男子史上初となる準優勝を果たした、錦織圭選手が帰国。会見で「のどくろが食べたい!」とコメントした。「それほどおいしいモノなのか!?」と思った人もいるのでは?

「のどくろ」という名前は俗称で、標準和名は「アカムツ」。スズキ目ホタルジャコ科に属する魚で、アカムツといってもスズキ目ムツ科のムツとは別種。口を開けると喉元が黒くなっていることから、もともとは、石川県や福井県などの北陸で「のどくろ」あるいは「のどぐろ」と呼ばれていたが、今はこれらの呼び名が「アカムツ」より一般的になっている。背側の体色は赤紅色で、腹側は銀白色。比較的大きめのウロコがついているが、皮が柔らかい。背びれの先端には細くて鋭いトゲがあり、キンメダイのようなギョロリとした大きな目をもっている。そのためか、島根県では小型ののどくろを「メッキン」とか「メキン」などと呼ぶらしい。

のどくろが分布しているのは、日本では東北、北陸より南の太平洋、日本海で、特に山陰沖から対馬近海にかけての水深80~150メートルあたりで多く漁獲されている。おもに砂底に住んでいて、甲殻類やイカ、タコなどを食べる。寿命は雄が5年、雌が10年ほどで、成長の遅い魚だ。大きいものだと体長が40センチメートルほどになるが、20~30センチメートルくらいが多く出回る。白身でありながら一年を通して脂がのっているので、旬の時期には諸説ある。晩秋から冬という人もあれば、産卵前の7月から8月がもっともおいしいという意見もある。いずれにしても、「東のキチジ(キンキ)、西ののどくろ」といわれるくらい、市場ではもっとも高値がつく魚の一つだ。値段は小さくてもキロあたり2千円以上、釣りで大型なら1万円以上になるらしい。

「白身のトロ」と呼ばれるのどくろ、やはり高級料亭でなければ食べられないのか……。ところが、とっておきの情報をゲットした。なんと、東京・四ツ谷にのどくろ料理を出す“居酒屋”があるのだ。居酒屋の名は、大胆不敵にも「うまい魚 のどくろ」。居酒屋というからには、いくらのどくろでもバカ高い額を請求されることはないだろう。ともかく、のどくろを食べに四ツ谷に向かった。

のどくろ
東京メトロ・四ツ谷駅で下車し、四谷税務署側の2番出口を出る。新宿通りの1本裏手の道をしばらく行くと、右手のビルの入り口に「うまい魚 のどくろ」の看板をみつけた。狭い階段を上がると、突きあたりに店の暖簾があった。威勢のいい声に励まされ、靴を脱いで店内へ。掘りごたつスタイルの席で、半個室風に仕切られている。地方都市によくある居酒屋のような、アットホームな空間だ。靴を脱いだせいもあって、妙にリラックスできる。ふと横を見ると、のどくろのPOPを発見! 「最高級魚のどくろ 一尾 2,980円(税抜) 刺身、塩焼き、煮付け、お選びください」とある。下世話な話だが、あるオンラインショップで見たのどくろの価格は、約26センチメートルのモノで一尾2,200円+送料950円。しかも、自分で調理しなきゃいけないのである。どう考えても「うまい魚 のどくろ」の一尾2,980円は安い。やはり居酒屋プライスではないか! 早速、薄造りをオーダー。と、織部焼のような深い緑色の皿に、背が赤紅色に輝く魚3尾をのせて、店長のキンちゃんがテーブルへやってきた。「こんばんは! いらっしゃいませ。ご注文ありがとうございます。のどくろです。どれをお刺身にしましょうか?」。深い緑と紅色のコントラストが実に美しい。切り身になっていないのどくろを見るのは初めてだった。「これ、お願いします!」。房州の魚市場の魚を食べて育った友人が、すかさず一尾を指さした。「黒目が澄んでてはっきりしてるでしょ」。なるほど、彼が選んだのどくろの目は、確かにパッチリしていて一番きれいだ。肉厚で体に張りがあり、大きさも25~26センチメートルくらいあった。

うまい魚のどくろ
鯵のなめろうを肴に、きりっと冷えた日本酒を呑んでいると、のどくろの薄造りがテーブルに運ばれてきた。肝添えではないか! ややピンクがかった切り身に肝とわさびをのせ、ほんの少ししょう油をつけて口に運ぶ。「トロケル~」。なんという深い味わい、上品な脂と旨み……。さすがに「白身のトロ」と称されるだけある。カワハギの肝しょう油和えが、かすんだ。

刺身も絶品だけど、もちろん、のどくろは塩焼きにしても煮付けにしても素晴らしい。次に四ツ谷に来るときは塩焼きにしようか……。店長のキンちゃんに、のどくろはいつでもあるのかと聞いてみた。「ご予約いただければ確実ですが……」。それは当然だ。もともとそんなにたくさん獲れる魚ではないし、価格も高い。予約をしてぜひまた来よう♪ そういえば、一昨年、のどくろの稚魚の飼育に成功したというニュースが報じられた。5年後の養殖技術の確立を目指しているとのことだった。のどくろをもっと手軽に食べられる日も、そう遠くはないかもしれない。